
派遣社員の同一労働同一賃金、何が起こる?―次年度に向けた賃金、派遣料金の見直しはあるのか―
2020年3月以降、コロナウイルスの影響により、多くの分野で物事が停滞しました。
派遣社員に対する同一労働同一賃金の問題も同様です。
4月からの新たな派遣単価など、派遣会社との各種交渉が終わって間もなく、コロナの影響で休業が発生した派遣先企業も多かったようです。その後契約を更新できなかったケースもある中で、景気はようやく底を打ち、回復に向かい生産増となる企業が増えてきているのではないでしょうか?
全国の労働局も動き出したようです。上期はコロナの影響の確認で各企業や派遣元への調査を行っていたのが、9月ごろから各地の派遣元に対し、≪同一労働同一賃金の金額設定などが正しく行われているか≫の調査が入ったとの声が寄せられており、その中でも、次年度に向けた賃金の見直しを適正に行えるよう、評価などの対応をきちんとするよう「念押し(?)」された派遣元もあったようです。
そのような中、10月21日には「令和3年度」の職種別の賃金水準と地域別の倍率が公開されました。(詳細は厚生労働省のサイトをご確認ください)
職種別賃金は殆どの職種で20円程度上昇しています。すでに基準金額を上回っていれば問題ないですが、そうでない場合は必ずそれを満たす必要があります。その上、評価による昇給の可能性もあるとなると、なかなか厳しい状況におかれる派遣会社も多いかもしれません。(一方、コロナウイルスの影響を受けた企業に対し、雇用維持を前提として今年度の賃金基準を引き継ぐことも可能とされており、条件はあるものの企業側への配慮も考えられているようです。)
支払賃金が上昇すればいずれ派遣料金へも影響があり、派遣先企業の立場としては、それが一番気になるところではないでしょうか。
いまだ景気が不透明で業務量も長期安定とは言いにくい状況が続く中、「今しばらく派遣を活用したい」という企業様も多いと思います。今回特に、派遣元がどのように評価を実施し、単価にどう反映されるかは、これからの派遣利用を考える上で非常に重要なところかと思います。
派遣社員の評価基準は、派遣会社がそれぞれ設定し、労使協定にて定めているものになります。本来派遣元が行う義務があるものですが、現実問題、派遣元のみで判断できるのは勤続期間や勤怠情報といったことに限られ、それだけで賃金の判断をするのは正直厳しいものがあります。実業務(スキル面、勤務態度など)を判断するために、派遣先に評価への協力依頼はあるでしょう。多くの派遣会社と取引があるほど、評価の対応や派遣料金交渉が出た場合に非常に工数がかかります。また金額上昇の程度が派遣元ごとにあまりに異なる場合、スタッフ間でのトラブルも予想されます。
コロナウイルスの影響もあり次年度の派遣単価は上げられない、派遣会社もそれを承知している、という企業も多いかもしれません。とはいえ、上げない場合でも派遣元は評価を実施しなければなりません。評価方法や結果の還元方法について、この機会に派遣先としての考え方を、派遣元と共有しておく、そのためにまずは自社の状況を確認することが重要ではないでしょうか。
※今回の法改正では2020年4月以前から在籍している派遣スタッフについても2020年4月入職者と同タイミングでの扱いになるため、年1回の賃金見直し・それに間に合うように評価を実施するには、2020年12月から2021年2月がピークとなることが予想されます。